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AI開発ツール「Dify」の可能性と、生成AIの未来展望

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MEDIUM定例座談会 2025年7月30日

このブログ記事は私達MEDIUMが週一回開催する定例会議の内容を再構成して掲載するものです。最新のAIニュースやウェブ制作、デザインに関する情報をお届けします。
※各AIサービスの性能比較や優劣に関する評価は発言者の主観が含まれます。また、サービス価格や機能については変動する可能性があるため、最新の正確な情報についてはベンダーの公式ホームページをご確認ください。
参加スタッフの紹介
吉田:Webディレクター、デザイナー
川村:Webデザイナー
西川:Webデザイナー
戸髙:Webデザイナー
本田:進行役

 
◯AIアプリ開発ツール「Dify」の可能性と課題
  DifyとLINEボットを連携させる試み
  ローコードツールの限界と特性の理解
  開発の目的とツールの適切な選び方
◯生成AIの進化と未来への展望
  特化型AIと汎用型AIの違いとは?
  自動運転から見るAIの責任の所在
  知識と実践で探るAIとの付き合い方
座談会を終えて

AIアプリ開発ツール「Dify」の可能性と課題

-DifyとLINEボットを連携させる試み-
〈本田〉
さて、本日はAIアプリ開発ツール「Dify」の具体的な活用法について深掘りしていきたいと思います。最近、戸髙さんがDifyとLINEを連携させる試みをされていると聞きましたが、進捗はいかがですか?

〈戸髙〉
はい、ちょうど試しているところです。Difyで作成したチャットボットをLINEのMessaging APIと連携させて、LINE上で動かせないかと考えています。最近、LINEボットを活用したサービスはかなり人気があるようで、これをDifyで手軽に作れたら面白いなと。

〈川村〉
なるほど、LINEをインターフェースにするわけですね。技術的には難しくないんですか?

〈戸髙〉
連携自体はそこまで複雑ではないんですが、Difyをセルフホスティングするためのサーバー知識は必要になりますね。手軽に試すというよりは、少し本格的な開発寄りになるかもしれません。

〈吉田〉
面白い試みですね。以前、Difyを使ってLINEボットを開発している企業の事例を見たことがあります。顧客からの問い合わせ対応や、簡易的な予約システムとして活用しているようでした。ユーザーが普段使っているLINEで完結するのは、確かに大きなメリットですよね。

〈西川〉
ビジネス的な観点から見ても、顧客エンゲージメントを高める良い手段になりそうですね。ただ、Difyで作ったボットの応答精度やセキュリティ面は、商用で使うとなるとしっかり検証する必要がありそうです。

〈本田〉
ありがとうございます。LINEボット連携は、Difyの可能性を広げる一つの方向性として非常に興味深いですね。では次に、Difyのようなローコードツールの特性や限界についても議論していきましょう。
-ローコードツールの限界と特性の理解-
〈本田〉
DifyはローコードでAIアプリを開発できるのが魅力ですが、その限界はどこにあるのでしょうか?西川さん、何か感じていることはありますか?

〈西川〉
そうですね、DifyはLLM(大規模言語モデル)を組み込んだワークフローを作るのは非常に簡単です。ただ、先ほどのLINE連携の話のように、外部サービスと連携させたり、インフラ部分を構築したりする際には、結局サーバーやAPIの専門知識が求められます。ローコードといっても、すべてがノンプログラミングで完結するわけではない、という点は理解しておくべきだと思います。

〈吉田〉
まさしくその通りですね。特にセルフホスティングする場合、AWSやGCPといったクラウドサービスの知識が必須になります。僕も少し触ってみましたが、どのインスタンスを選ぶか、どうネットワークを構成するかで、パフォーマンスもコストも大きく変わってきます。このあたりは完全にインフラエンジニアリングの領域です。

〈川村〉
なるほど。つまり、Difyは「AIの思考部分」をローコードで組み立てるツールであって、それを動かすための「身体や神経」は別途用意する必要がある、というイメージでしょうか。

〈吉田〉
その例えは分かりやすいですね。AIの脳みそを作るのは簡単だけど、それを実際に社会で動かすための体作りは、また別の技術が必要になる、と。

〈戸髙〉
だからこそ、どこまでをDifyでカバーして、どこからを専門的な開発に切り替えるかの見極めが重要になりますね。あくまでDifyは「LLMアプリケーション開発ツール」なので、その特性を正しく理解することが、ツールを最大限に活かす鍵だと思います。
-開発の目的とツールの適切な選び方-
〈本田〉
ツールの特性を理解した上で、どのような目的でDifyを使うのが最適なのか、皆さんの意見を聞かせてください。

〈吉田〉
まず、社内向けの業務効率化ツールや、プロトタイピングには最適だと思います。アイデアを素早く形にして、実際に動かしながら改善していく、といったアジャイルな開発スタイルに向いていますね。逆に、大規模な商用サービスをDifyだけで構築するのは、現状ではまだリスクがあるかもしれません。

〈西川〉
クライアントへの提案段階で、モックアップとしてDifyで組んだものを見せるのは非常に有効だと感じます。実際に動くものを見せることで、完成形のイメージを具体的に共有できますから。ただ、それがそのまま製品になるわけではない、という共通認識を持っておくことが大切です。

〈川村〉
私たちデザイナーの視点からすると、UI/UXの検証を手軽に行えるのが良いですね。ユーザーがどういうプロンプトを入力し、AIがどう応答するか、その一連の流れをシミュレーションすることで、より使いやすいデザインを追求できます。

〈戸髙〉
そうですね。最終的に言えるのは、「何を作りたいか」という目的を明確にすることが、ツール選びの第一歩だということです。単純なチャットボットならDifyで十分かもしれませんが、より複雑なロジックや高度なセキュリティが求められるなら、AWSのサービスを組み合わせてフルスクラッチで開発する方が良い場合もある。それぞれのツールの長所と短所を理解して、適材適所で使い分けることが重要ですね。

〈本田〉
なるほど。ツールの機能だけでなく、開発の目的やフェーズによって最適な選択肢は変わってくるわけですね。非常に参考になりました。

生成AIの進化と未来への展望

-特化型AIと汎用型AIの違いとは?-
〈本田〉
さて、少し視点を変えて、AIそのものの構造についても理解を深めていきたいと思います。最近「特化型AI」と「汎用型AI」という言葉をよく聞きますが、この違いについて戸髙さん、何か調べていますか?

〈戸髙〉
はい、少し勉強しました。すごく簡単に言うと、「特化型AI」は、将棋や金融審査のように、あらかじめ人間が設定したルールの中で最適な答えを出すAIです。記号的AIとも呼ばれますね。一方で「汎用型AI」は、大量のデータからAI自身がルールやパターンを学習していくものです。これが機械学習にあたります。

〈吉田〉
その汎用型AIの中に、さらに「機械学習」「深層学習(ディープラーニング)」「生成AI」という階層構造がある、という理解で良いですかね。AIという大きな枠の中に機械学習があり、その一部が深層学習で、さらにその技術を応用したのが現在の生成AI、というイメージです。

〈川村〉
なるほど。じゃあ、今のChatGPTやGeminiは、汎用型AIがものすごく進化した姿ということなんですね。

〈西川〉
ただ、汎用型AIが進化しているからといって、特化型AIがなくなるわけではないのが面白い点です。特定のタスクにおいては、ルールベースで動く特化型の方が、コストも精度も高い場合がありますからね。例えば、工場の検品システムなどは、汎用型AIより特化型AIの方が向いていると言えます。

〈本田〉
目的によってAIの種類も使い分けられているわけですね。特化型の例として自動運転の話が出ましたが、AIが社会に浸透する上で避けて通れない「責任」の問題にも触れていきたいと思います。
-自動運転から見るAIの責任の所在-
〈本田〉
自動運転車が事故を起こした場合、その責任は誰が負うべきなのか。これは非常に難しい問題ですよね。

〈吉田〉
まさに「トロッコ問題」のような話ですよね。AIが倫理的な判断を迫られる場面で、どういうプログラムを組むべきなのか。例えば、「乗員1人を犠牲にして歩行者5人を助ける」のか、「歩行者5人を犠牲にして乗員1人を守る」のか。この判断をAIに委ねた場合、その結果責任はメーカーにあるのか、所有者にあるのか、あるいは国にあるのか、世界中で議論されています。

〈川村〉
ユーザーの立場からすると、自分が乗っている車が勝手に自分を犠牲にする判断をする可能性がある、と考えると少し怖いですね…

〈西川〉
法整備が全く追いついていないのが現状です。結局、所有者が同意書にサインして「リスクを理解した上で使います」という形に落ち着くのかもしれませんが、それでは根本的な解決にはなりません。技術の進歩に社会のルール作りが追いついていく必要があります。

〈戸髙〉
これは自動運転に限らず、医療AIや金融AIなど、あらゆる分野で起こりうる問題です。AIが出した診断や投資判断によって損害が出た場合、その責任の所在をどう定義するのか。技術者だけでなく、法律家や倫理学者も交えた議論が今後ますます重要になってくると思います。

座談会を終えて

〈本田〉
本日は、AIアプリ開発からその社会的課題まで、非常に幅広く、そして深い議論ができました。Difyのようなローコードツールをどう実践的に活用していくかというミクロな視点と、AIという技術が社会や倫理とどう向き合っていくべきかというマクロな視点、その両方を行き来できた有意義な時間だったと思います。ツールの使い方一つをとっても、その背景にあるAIの構造や思想を理解することで、より本質的な活用法が見えてくるのだと改めて感じました。今後も私たちは、ただツールを使うだけでなく、その可能性とリスクを常に探求しながら、クライアントにとって最適なソリューションを提供していきたいと思います。皆さん、ありがとうございました。