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AIの著作権を巡る争いを話し合ってみた

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MEDIUM定例座談会 2025年7月9日

このブログ記事は私達MEDIUMが週一回開催する定例会議の内容を再構成して掲載するものです。最新のAIニュースやWeb制作、デザインに関する情報をお届けします。
※各AIサービスの性能比較や優劣に関する評価は発言者の主観が含まれます。また、サービス価格や機能については変動する可能性があるため、最新の正確な情報についてはベンダーの公式ホームページをご確認ください。
参加スタッフの紹介
吉田:Webディレクター、デザイナー
川村:Webデザイナー
西川:Webデザイナー
戸髙:Webデザイナー
本田:進行役
●AIと著作権の最前線
 ◯AIの学習は著作権侵害?米裁判所の歴史的判断
 ◯学習データと推論データ、著作権の境界線はどこか
 ◯海賊版データの使用問題、AI倫理の新たな課題
●現場で使える!AIツール活用術
 ◯Dockerで安全に構築するAI開発環境
 ◯Difyで加速する社内AIアプリ開発の波
 ◯面倒なブログ更新を自動化するAIワークフロー構築術
●これからのビジネスとAIの向き合い方
 ◯業界特化で勝つ!中小企業のためのAI導入戦略
 ◯大手企業のAI戦略から学ぶ、これからのビジネスの形
●座談会を終えて

AIと著作権の最前線

-AIの学習は著作権侵害?米裁判所の歴史的判断-
<本田>
さて、今日の最初のテーマは「AIと著作権」です。先日、Anthropic社のAIモデル「Claude」が著作権侵害で訴えられた裁判で、大きな動きがあったそうですね。吉田さん、詳しく教えていただけますか?
<吉田>
はい。この裁判は、作家たちが自身の著作物を無断でAIの学習データに使用されたとして訴えたものでしたが、アメリカの裁判所は「AIの学習プロセス自体は著作権侵害に当たらない」という画期的な判断を下しました。これはAI業界にとって非常に重要な判例になりそうです。
<川村>
なるほど。でも、なぜ著作権侵害にならないんでしょうか?人の作品を勝手に使っているわけですよね?
<吉田>
良い質問ですね。裁判所の理屈は、「AIがデータを学習する行為」を「人間が本を読んで勉強する行為」と同じように捉えている点にあります。人間が知識を得るために様々な本を読んでも、それ自体が著作権侵害にならないのと同じで、AIがデータを読み込んで学習するだけでは侵害とは言えない、という考え方です。
<西川>
面白い例えですね。つまり、重要なのは学習した後の「アウトプット」ということですか?
<吉田>
その通りです。次のテーマにも繋がりますが、まさに「学習」と「推論」、つまりインプットとアウトプットの境界線がどこにあるのかが、今後の大きな争点になってきます。
-学習データと推論データ、著作権の境界線はどこか-
<本田>
では、その「学習」と「推論」の境界線について、もう少し詳しく掘り下げてみましょう。戸髙さん、どう思われますか?
<戸髙>
受験生の例で考えると、一生懸命勉強して(学習)、テストで自分の言葉で解答を書く(推論)のは問題ない。でも、もし解答が教科書や参考書の丸写しだったら、それはカンニング、つまり著作権侵害になる、というイメージでしょうか。
<吉田>
まさにその通りです。AIが生成した文章や画像が、学習元の特定の作品と酷似している場合、それは著作権侵害とみなされる可能性が十分にあります。今回の判決はあくまで「学習プロセス」をセーフとしただけで、生成されるコンテンツの著作権問題が解決したわけではありません。
<川村>
ということは、僕たちがAIを使ってデザインや文章を生成するときは、生成されたものが特定の既存作品に似すぎていないか、常に注意を払う必要があるわけですね。
<西川>
そうですね。特に画像生成AIなどは、特定のアーティストの画風を模倣する機能がありますが、その使い方には慎重になるべきかもしれません。単なる「スタイル」の模倣なのか、著作権侵害にあたる「複製」なのか、その判断は非常に難しい問題です。
-海賊版データの使用問題、AI倫理の新たな課題-
<本田>
著作権の問題には、もう一つ大きな論点がありますよね。学習データそのものの「出自」の問題です。
<戸髙>
はい、Anthropicの件でも、学習データの中に海賊版の書籍データが含まれていたことが問題視されていました。学習プロセス自体が適法でも、その元となるデータが違法に入手されたものであれば、倫理的な問題が生じますよね。
<吉田>
おっしゃる通りです。裁判所も、海賊版データを使用した点については別途問題があるという姿勢を示しています。これは、AI開発企業が今後、学習データのクリーンさを証明しなければならなくなる可能性を示唆しています。どこから、どのようにしてデータを収集したのか、そのトレーサビリティが問われる時代が来るかもしれません。
<川村>
それは大変ですね。インターネット上には無数のデータがありますが、その一つ一つが合法的なものか確認するのは、ほぼ不可能です。
<西川>
だからこそ、AdobeのFireflyのように、自社のストックフォトや著作権フリーの素材のみを学習データとして使用し、クリーンさを売りにするサービスが評価されているわけですね。私たち制作者側も、どのAIがどのようなデータを学習しているのかを意識して、ツールを選ぶ必要があると感じます。
<本田>
ありがとうございます。著作権を巡る議論は、法整備も含めてまだまだ過渡期ですが、私たち自身も常に最新の動向を追い、倫理的な視点を持ってAIを活用していくことが重要ですね。

現場で使える!AIツール活用術

-Dockerで安全に構築するAI開発環境-
<本田>
次に、より実践的なツールの活用法について話しましょう。最近、様々なAIツールが登場していますが、新しいツールを試す際にセキュリティが気になります。吉田さん、安全な開発環境を構築する方法はありますか?
<吉田>
それなら、Dockerの活用が非常に有効です。Dockerは「コンテナ」と呼ばれる隔離された仮想環境を構築できる技術で、この中でMCPを動かせば、万が一ツールに問題があっても自分のPC本体に影響が及ぶのを防げます。
<川村>
なるほど。サンドボックスのようなものですね。具体的にどんなメリットがあるんですか?
<吉田>
例えば、出所のよくわからないMCPを直接PCにインストールすると、裏で個人情報や他のファイルを抜き取られるリスクがあります。しかし、Dockerコンテナ内で実行すれば、コンテナの外にあるファイルにはアクセスできないため、非常に安全です。最近では「mcp-server-toolkit」のような、様々なAIサーバーをDockerコンテナとして簡単に起動できるツールキットも出てきているので、手軽に安全な実験環境を作れますよ。
<戸髙>
それは便利ですね。色々なツールを気軽に試したいけど、セキュリティが心配で躊躇していたので、ぜひ使ってみたいです。VS Codeなど、普段使っているエディタとの連携も可能なんですよね?
<吉田>
はい、もちろん連携できます。Dockerコンテナ内のサーバーにVS Codeから接続して、開発を進めることが可能です。これにより、安全性を保ちながら、いつも通りの快適な開発体験を得られます。
-Difyで加速する社内AIアプリ開発の波-
<本田>
安全な環境が整ったところで、次は具体的なアプリケーション開発の話です。西川さん、最近注目しているツールはありますか?
<西川>
最近、CyberAgentさんがオープンソースのAIアプリ開発プラットフォーム「Dify」を全社的に導入したという記事が非常に興味深かったです。驚いたのは、エンジニアだけでなく、営業職などの非エンジニアの社員も積極的にDifyを使って業務効率化のためのAIアプリを開発している点です。
<戸髙>
大手企業ならではのスケールの大きな話ですね。具体的にはどんなアプリが作られているんですか?
<西川>
記事によると、社内文書を読み込ませて質問に答えるチャットボットや、広告文のアイデアを生成するツールなど、多岐にわたるようです。CyberAgentさんは、社内で講座を開いたり、サポート体制を整えたりして、全社的なAIリテラシーの向上を図っているみたいですね。
<川村>
Difyのようなプラットフォームを使えば、プログラミングの知識がなくても、アイデア次第で便利なツールが作れる時代になってきたんですね。私たちも、社内の定型業務を自動化するような簡単なアプリから始めてみると良いかもしれません。
-面倒なブログ更新を自動化するAIワークフロー構築術-
<本田>
社内アプリ開発、素晴らしいですね。まさに、私たちが今取り組もうとしているこの座談会ブログの更新作業も、AIで自動化できる部分が多いはずです。
<吉田>
そうですね。理想的なワークフローとしては、まずこの会議の録音データをWhisperのような音声認識AIで文字起こしし、そのテキストをGeminiやClaudeなどのLLMに投入して、自然な会話形式の議事録に要約・再構成させます。(しています・・・、(^^) 作者注)
<戸髙>
そこからが重要ですよね。生成されたテキストをWordPressに投稿する際に、見出しや段落のタグ付けが非常に手間です。
<吉田>
その部分もAIに任せましょう。まず一度、私たちが手動で理想的なタグ付けをした記事をテンプレートとして作成します。そのHTMLソースをAIに学習させ、「このテンプレートと同じ形式で、新しい議事録テキストにタグを付けてください」と指示すれば、かなりの精度で自動化できるはずです。
<川村>
なるほど。WordPressのブロックエディタには、ブロックをカスタムHTMLとして編集する機能があるので、AIが生成したタグ付きのテキストを丸ごとコピペすれば、一瞬で記事の骨格が完成しますね。これは大幅な時間短縮になりそうです。
<西川>
最終的には、録音データをアップロードしたら、自動で文字起こしから記事生成、タグ付けまで完了し、WordPressの下書きに保存される、という全自動のパイプラインをn8nのようなツールで構築するのが目標ですね。(現在のところまだここまでできていません・・・、(^_^;) 作者注)
<本田>
夢が広がりますね。ぜひ実現に向けて進めていきましょう。

これからのビジネスとAIの向き合い方

-業界特化で勝つ!中小企業のためのAI導入戦略-
<本田>
さて、最後の大きなテーマです。CyberAgentさんのような大企業とは違い、私たちのような中小企業は、どのようにAIと向き合い、ビジネスに活かしていくべきでしょうか?
<吉田>
やはり鍵になるのは「業界特化」だと思います。私たちはWeb制作会社であり、特に不動産業界の広告代理店としての長年の経験と知識があります。この強みを活かさない手はありません。汎用的なAI活用ではなく、不動産業界に特化したAIエージェントやツールを開発・提供していくのが私たちの進むべき道だと考えています。
<西川>
具体的にはどんなことが考えられますか?不動産業界特化というと。
<吉田>
例えば、物件情報やターゲット層を入力するだけで、魅力的な広告キャッチコピーや説明文を何パターンも自動生成するツールなど、顧客からの問い合わせに24時間対応する専門知識を持ったチャットボットなど、考えられることはたくさんあります。
<戸髙>
なるほど。大企業が手掛けるような大規模で汎用的なAIではなく、特定のドメイン知識を深く学習させた、ニッチで専門性の高いAIで勝負するわけですね。それなら、私たちにも勝機がありそうです。
-大手企業のAI戦略から学ぶ、これからのビジネスの形-
<本田>
中小企業の戦略を考える上で、大手企業の動向から学ぶことも多いですよね。最近、テック業界の勢力図に変化の兆しがあるとか。
<川村>
はい、非常に興味深い動きとして、これまでMicrosoftと密接な関係にあったOpenAIが、GoogleのAIチップ「TPU」を導入し始めたというニュースがありました。これは、OpenAIがMicrosoft一辺倒の体制から脱却し、より多角的なパートナーシップを模索し始めたことを示しています。
<吉田>
学習用のGPUではNVIDIAが圧倒的なシェアを誇っていますが、推論(AIの実行)フェーズではGoogleのTPUも非常に高性能でコスト効率が良いとされています。OpenAIは、それぞれのプロセスで最適なハードウェアを選択する、より柔軟な戦略にシフトしているのかもしれません。
<西川>
検索機能に関しても、これまでChatGPTはMicrosoftのBingを主に使用していましたが、最近の検索結果を分析すると、Google検索を参照しているケースが増えているという噂もあります。大手同士の連携と競争が、水面下で激しく動いているのを感じますね。
<戸髙>
私たちも、特定のAIサービスやプラットフォームに依存しすぎるのは危険かもしれませんね。常に業界全体の動向を注視し、その時々で最も優れたツールを柔軟に選択・組み合わせられる体制を整えておくことが重要だと感じました。

座談会を終えて

<本田>
皆さん、本日も活発な議論をありがとうございました。著作権という法的な問題から、DockerやDifyといった具体的なツール活用術、そして今後のビジネス戦略まで、非常に内容の濃い座談会になりました。最後に一言ずつ感想をお願いします。
<吉田>
AIの変化のスピードは凄まじいですが、その分、新しい可能性が次々と生まれていてワクワクします。今日話したブログの自動化ワークフローは、すぐにでも実現したいですね。
<川村>
大手企業の戦略から、自分たちの立ち位置を見つめ直す良い機会になりました。ニッチな分野で専門性を高めるという方向性は、非常にしっくりきました。
<西川>
Difyの事例は衝撃的でした。非エンジニアでもアイデアを形にできるというのは、組織全体の創造性を引き出す上で大きな力になると思います。
<戸髙>
著作権の問題は複雑ですが、避けては通れない道だと改めて感じました。クリエイターとして、常に正しい知識と倫理観を持ってAIと付き合っていきたいです。
<本田>
ありがとうございました。来週もまた、有益な情報交換ができることを楽しみにしています。それでは、本日の定例座談会はこれにて終了します。お疲れ様でした。